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2008年5月30日 (金)

新郎新婦へ贈る言葉

  最近、結婚式にご招待いただくことが多くなった。昨年は、神戸まで出かけて、藤原紀香さんの披露宴に出席したが、著名な方々が多く列席していることと、お料理が豪華なことと、引き出物が立派なことに大いに驚かされた。TV局が進行を管理し、徳光さんが司会をつとめ、芸能人がスピーチをすると、こうもスムースかつ面白いものになるのかと感心しきりでもあった。

 あさっての日曜日も、職場の女性の披露宴である。しかも、スピーチをしなくてはならない。さて、何を喋ればよいか。15年ほど前に、職場の仲間の披露宴2件で、不穏当なスピーチをかまし、宴を台無しにしてしまったことがある。なんで、そんな挙に出てしまうのか。おとなしく、普通のスピーチをしておけばいいではないか、と多くの方は思うだろう。私も思う。しかし、その場になると、「予定調和的なとりつくろい」ができなくなる。「なーに、かっこつけてんだよ」という気持ちがむくむくともたげてくる。大人気ないこと甚だしい。

 その2件の事件があって以来、私に披露宴への出席やスピーチの依頼がとんと来なくなって、ほっとしていたのだが、私の、そんな過去の不行状を知らない若い人たちから、ぽつりぽつりとお誘いがかかるようになった。ずいぶんと勇気のある行為である。


 つい先日も、職場の部下の披露宴に招かれ、主賓の挨拶、というものを行ったばかりである。喋るに事欠いて、なんと、私は内田樹先生の書物を朗読するという蛮行に及んだのであった。それがいかに「蛮行」であったかは、その直後に挨拶に立たれた年配の方が、私の発言を取り上げて、その否定にこれ努めていた、という事実が十全に語っている。きれいに着飾った新郎新婦を前にして、こんな文章を読み上げたのである。

<結婚がオススメなのは、それが「不幸」な経験、「受難」の日々を約束してくれるからである。結婚とはごくたまに愉しいこともあるが、総じて「エンドレスの不快」によって構成されている。(略)
 結婚とはひとことで言えば、「他者と共生すること」である。一緒に暮らすその他者と、あなたは気持ちが通じないこともあるし、ことばが通じないこともあるし、相手のふるまいのひとつひとつが癇に障ることだってある。そしてこう思う。「この人が何を考えているのか、私には分からないし、この人も私が何を考えているのか、分かっていない」 
  それでオッケーなのである。(略)
  結婚とは「この人が何を考えているのか、私には分からないし、この人も私が何を考えているのか、分かっていない。でも、私はこの人にことばを贈り、この人のことばを聴き、この人の身体に触れ、この人に触れられることができる」という逆説的事況を生き抜くことである。
  自分を理解してくれる人間や共感できる人間と愉しく暮らすことを求めるなら、結婚をする必要はない。結婚はそのようなことのための制度ではない。そうではなくて、理解も共感もできなくても、なお人間は他者と共生できるということを教えるための制度なのである。>(内田樹著「街場の現代思想」文春文庫 P157-162)

  会場がシーンとしたね。そこに居合わせたどなたもが、主賓のくせにこいつは何を言ってるんだ、という顔をしていた。しかし、申し訳ないけれど、私は「本当のこと」を喋ったに過ぎない。このようなシチュエーションでは、ほとんどの人はステレオタイプな、当たり障りのないご挨拶に終始してしまう。だがそのとき私は、人生の新たなステージに足を踏み出すふたりに「本当のこと」をきちんと伝えておきたかったのである。「気休め」を言って、若いふたりを惑わすようなことだけはどうしても避けたかったのである。


  そうはいっても、私は、やっぱり愚かでしょうか? 内田先生!

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コメント

いきなり失礼します。通りすがりのものです。

新郎新婦へ贈る言葉。共感しました。

近々部下の披露宴で主賓の挨拶を務めさせて頂くこととなりました。

挨拶するにあたり、色んな本を読み、事の重要さを認識しつつも、何か引っかかる部分がありました。
(こんな挨拶で良いのか、何を求められているのか、誰に伝えるべきなのか)

これまでも私の後輩が結婚した際、必ずといって良いほど『結婚は地獄の始まり』と言い続けてきました。

内田樹さんの書物には、まさにそれを説明されていると感じました。

私は、披露宴での挨拶は、両家の列席者に向けて行おうと考えました。

だからこの説明を主賓の挨拶でしないつもりです。
しかし、2次会等の改めた場があれば、そこで話したいと思いました。

表の挨拶と裏の挨拶。そんな感じです。

恥ずかしながら内田 樹さんという名をはじめて知りました。『街場の現代思想』も含めて、色々と読ませてもらおうと思います。

投稿: 通りすがりの共感者 | 2009年7月 9日 (木) 00時34分

拙文をお読みいただき、かつコメントも残して下さり、ありがとうございます。ブログを続ける励みになります。
この文章をきっかけにして、新しい本と遭遇されることになれば、もって瞑すべし、です。

投稿: 通りすがり様 路傍より | 2009年7月 9日 (木) 18時22分

しかし、披露宴をひらくことそのものがステレオタイプなのだから、そういうひとたちにはステレオタイプなスピーチでいいんじゃなかろうか。

投稿: ふむふむ | 2009年8月27日 (木) 18時00分

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