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2008年6月25日 (水)

みたび、「井上雄彦 最後のマンガ展」に

 しばらく更新していないと、早く更新しろ、という督促メールが知人から届けられる。趣味で始めたのに、なんだかいつのまにか、仕事みたいになってきた。確かに自分自身も、長らくお暇にしていると、夏休みの宿題を片付けていない中学生のように落ち着かない気分になってくる。
 
  多分、人はあきれるだろうが、またしても上野の森美術館に行ってきた。もちろん、「井上雄彦 最後のマンガ展」を見にである。週末の夜、閉館後に、関係者を対象に、内覧会が催されたのだが、ちゃっかり、そこにもぐりこんだのである。

  この内覧会は、同展を記録するDVDの撮影のために催された。不特定多数をビデオにおさめるのは具合が悪い。ならば、関係者を呼び集めて、記録しておこう、ということらしい。入り口で、撮影されることを潔しとしない方は申し出てほしい、そのことを知らせるための腕章を手渡すので、と告げられる。だが、そんなひとは一人もいなかったように思う。

  入り口で入場の順番を並んでいると、井上氏のインタビューをしたり、一緒に旅をしてレポートを書いたりしているI氏を紹介される。初対面だが、「実はこれで3回目の鑑賞なんです」と告げる。「しかも、前の2回では泣いちゃいました」と恥ずかしながら告白すると、「あ、あの母子像のところでしょ」とすぐに指摘される。「はあ、そうなんです・・・」。
 
  なんのことはない、関係者の間では、あの「母子像」のコーナーは、泣かせどころとして周知のことだったのである。そこにしっかりはまっている自分のことを考えると、すこし複雑な気持ちになる。

  内覧会で、井上氏本人にお会いできるやもしれぬと、ひそかに期待していたが、残念ながらお目にかかることはできなかった。もっとも、お会いできたとしても、何をどう話していいのか困ったかもしれない。「感動して泣いちゃいました」と、いい歳をしたおっさんに話しかけられても、井上氏も困惑しただろう。

  ご本人にはお目にかかれなかったが、井上夫人を遠くから見かけた。そして、驚いたのは、その足元に二人の小さな男の子がまとわりついていたことだった。井上ジュニアであるその少年たちは、背格好から想像するに多分、双子である。母親のそばに立つその二人の少年を見ていてすぐに理解したのである。
 
  あの母子像は、自身の子供と妻なのではないか、と。母親の胸に顔を埋めて、気持ちよさそうに眠っている武蔵は、他でもない、井上雄彦のわが子なのではないか、と。そういえば、会場の入り口に掲げられた小さな男の子の絵を、私は武蔵の幼少期の肖像だと思い込んでいたが、よーく眺めてみると、井上雄彦その人に顔が似ている。そうである、あれは、わが子に違いない。

  そこまで思い至ったときに、悟ったのである。井上雄彦にとっての武蔵と小次郎は、今、母の足元でじゃれている二人の男の子にほかならないのだと。

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