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2008年8月 7日 (木)

内田樹と「その土曜日、7時58分」

  

   ただ今、夜の10時半。会社の机の上のパソコンに向かっている。外で酒を飲み会社に帰ってきたところ。結構酔っ払っちゃっている。このままでは、とてもクルマの運転はできない。なので、酔い覚ましついでにブログを更新することにしたが、いかんせん酔っ払っている。素面になってから読み返したら、あきれるようなことを書いてしまうかも知れないが、どうかご寛恕いただきたい。

  先日、シドニー・ルメット監督の最新作「その土曜日、7時58分」を試写会で観てきた。ルメット監督は84歳。本作が45本目の作品になるんだという。さすがに、今時のテンポの映画ではないが、老練らしい手さばきで、込み入った脚本をそつなくこなしている。

  何より、監督がルメットだということで、一癖も二癖もある役者が揃っているところがすごい。「マグノリア」「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマン。「ヒマラヤ杉に降る雪」のイーサン・ホーク。「さよなら。いつかわかること」のマリサ・トメイ。そして「ボーン・アルティメイタム」のアルバート・フィニー。

  どいつもこいつも、一筋縄ではいかない。軽量級の監督ならば吹き飛ばされそうなアクの強さである。「泣き」の演技をさせたら右に出るもののいないホフマン。「なさけない奴」を演じさせたら右に出るものいないホーク。「おつむの足りない女」を演じさせたら、この人、地がこういう人ではないのかと思わせるトメイ。映画の撮影に参加する前に病院に行くべきだろうと思わざるを得ないほどに「心臓の悪い人」の演技が堂に入っているフィニー。怪演、奇演、壮演のオンパレードである。

  で、そんなに個性的な役者がそろってどんな話を演じているのかというと、あまり詳しく書くと興ざめになっちゃうだろうから簡単に書くけれど、裸形の「家族の肖像」である。ある一つの事件を契機に、まるでたまねぎの皮がむけるように、次から次へと、醜い家族の裸の姿が露呈していくのである。結構きつい話なのである。それを個性的な面々が演じているので、なかなか飽きさせない。

   そんな醜悪な家族の話を観た後で、内田樹氏の最新刊「こんな日本でよかったね」(バジリコ)を寝転がって読んでいたら面白い一説に出くわした。

<親族が集まったとき、「ある人」がいないことに欠落感を覚える人と、その人がいないことを特に気にとめない人がいる。
「その人がいない」ことを「欠落」として感じる人間、それがその人の「家族」である。
  その欠落感の存否は法律上の親等や血縁の有無とは関係がない。・・・・・
  家族とは誰かの不在を悲しみのうちに回想する人々を結びつける制度である。>(P64)

  これを読んで、ああ、内田氏は幸せな家庭環境のうちに育ったのだなあ、と思った。「家族とは誰かの不在を悲しみのうちに回想する人々を結びつける制度である」というのは美しいフレーズである。だが、あまりに美しすぎて、それはあまりに一面的ではないかと思わざるを得ないのである。

  私は17年前に父を亡くした。今は懐かしい回想の中にしか父は生きてはいないが、本当に父が生きていた頃に、2度ほど痛切に殺したい、と思ったことがあった。もちろん思うだけで実行に及ぶことはなかったのだが・・・。

  何が言いたいのか。つまり、その人の「不在」を悲しみのうちに回想する人々だけがその人の家族であるわけではなくて、「その人が自分の眼前に立ちはだかるとき、この人さえいなければ、とその消失を切望し、実際に消失したときに、心から安堵する人もまた、まぎれもなく、その人の家族なのだ」ということを、ある種の悲しみを抱きながら、記しておきたかったのである。

  この映画のタイトルは「その土曜日、7時58分」となんだか思わせぶりだが、本来のタイトルは「BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU’RE DEAD」。「あなたが死んだことが、悪魔に知れる前に」という意味だが、本当はアイルランドで交わされる古い乾杯の音頭、「死んだことを悪魔に気づかれる30分前に天国に行けますように」からとったものだという。

  妙に含蓄に富んだタイトルである。そうだね、私も、あなたも、死んだことが悪魔に気づかれる30分前に、できることなら天国に行きたいよね。地獄はいやだ。

    そろそろ、酔いも醒めてきたかな。クルマ、運転できるかな。

  誰も言わないから、最後に書き付けておきたい。

  家族というのは、地獄のファーストネイムに他ならない。

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コメント

家族は大変、嬉しい、辛いが混ざる、特に家族には。なんてね。

投稿: cocoseri | 2008年8月 8日 (金) 09時00分

いつも駄文にお目通しいただきありがとうございます。
たまには面白いことも書きたいのですが、なかなか思うようにはまいりません。暑さにめげずに頑張ります。たまにはお茶でもしましょうか。

投稿: cocoseriさま 路傍より | 2008年8月12日 (火) 21時36分

黒びかりなんて夏に負けてないですね。さすがだけど一応日焼け止めなどのお手入れもお願いします、なんて余計ですが。お茶 いきましょう!握りこぶしも 、オリンピックもそうだそうだ~~

投稿: cocoseri | 2008年8月16日 (土) 08時57分

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