« 「ハプニング」 | トップページ | タクシー王子・川鍋社長に会う »

2008年8月19日 (火)

つられあくび

 今年の3月1日付けで、「嘔吐論」という気持ちの悪いタイトルで以下のような話を書いた。

<で、今回のテーマはですね、前置きがずいぶんと長くなってしまいましたが「人はなぜ、つられゲロをしてしまうのか」についての陳腐な私見をご披露したいと思うわけです。なぜ、人は、他人が嘔吐している様子を間近で目撃すると、自分も気持ち悪くなってしまうのか。時には、なぜ、一緒になって吐いてしまうのか。気持ちの悪いテーマですが。 (略) 

   まあ、それはいいとして、「つられゲロ」に言及する前に、それに似ているけれど全然違う「つられあくび」を考えてみます。よく、テレビを見ていて登場人物があくびをすると、見ているこちらもあくびをすることがあります。喫茶店などで友人とお話をしていて、相手がちょっと疲れてあくびをすると、それにつられてこちらもあくびをすることがよくありますよね。
 
   あれは、つまり、「今、自分の目前にいる人間があくびをしている、ということは彼、または彼女は体内の酸素が不足していて、無意識のうちに、あくび、つまり酸素を体内に大量に供給することによって、その不足を解消しようとしている」という無意識の理解がこちらにあって、本能的に、そう、まったく本能的に同じ動作をしてしまうんじゃないかと思うわけです。つまり、目前の人物があくびをしているということは、今、二人が置かれている環境は、酸素が不足している可能性が高いので、深呼吸したほうがいい、ということを暗黙のうちに察知し、「つられあくび」をしてしまうわけなんです。
 
   太古の昔、人間は洞窟などで共同生活を送っていたはずです。洞窟の中で焚き火をすることもあったでしょうし、洞窟そのものに新鮮な空気が流入しにくい構造のものがあったに違いありません。ほかの動物や人間の襲撃を避けるための住まいならばなおのことそうだったに違いありません。そんな生活空間で誰かがあくびをすることは、周囲に同時にいる人間たちもそうしたほうがいい行為だったはずです。つまり、それは危険を知らせるシグナルだったわけです。
 
   
    ここから「つられゲロ」の行為を類推してみたんです。こういうことです。大昔の人間たちは、おそらくその親族らとともに起居し、ともに同じような食物を食べていたはずです。同じ水を飲み、同じ細菌に冒されていた可能性は大いに高かたに違いありません。
 
    そんなときに、集団の成員の誰かが、激しく嘔吐するということは、その原因となるものがなんであれ、成員の全員が同じ原因物質を摂取したおそれが十分にあるわけです。つまり、成員の誰かが「嘔吐している」ということは、「彼、あるいは彼女が体内にとどめておかないほうがいい物質を、口から体外に排出している」わけですから、同様の物質を摂取した可能性の高い周囲の成員も同様に排出したほうが絶対にいいわけです。かくして、「つられゲロ」は人の本能として身についた次第なのです。
 
   つまり、十分に「つられゲロ」が身に付いた集団は幸いにして生き延び、そうでない集団はそうでないがゆえに、長い人類の歴史の中のどこかで死に絶えたというわけです。ですから、この地球上に生息する人類はみーんな「つられゲロ」仲間だといっても過言ではないのです。>
  
   まあ、ここで書いていることは単なる思いつき、なんの根拠もないインチキ生物学なのであるが、仮説としてはかなり面白いものではないか、と自負している。そんな話を書きつけたことも忘れていたのだが、つい先ごろ、朝日新聞に興味深い記事が掲載された。引用する。

<人のあくびが犬に伝染することが実験で確かめられた。あくびの伝染は人やチンパンジーの間で報告されているが、人と犬では初めて。ロンドン大学の千住淳研究員(心理学)らが英科学誌バイオロジー・レターズに発表した。「飼い犬は人に共感する能力を備えているのかも」と話している。
 
   実験は、飼い主の家など、犬が落ち着ける場所で行った。飼い主以外の人が5分間犬と一緒にいて、目があったら声を出してあくびをした。その結果、29匹のうち21匹が1回以上のあくびをした。あくびと同じような口の動きだけでは1匹もあくびをしなかった。人から犬へのあくび伝染のメカニズムについては研究が必要という。 >
  
   面白い研究である。私の「つられゲロ」仮説を裏付けてくれるような話ではないか。犬も人も、「つられゲロ」「つられあくび」を身につけたがゆえに、現在こうして生存しているのではないか。
  
   しかもそれが、種を超えて伝染するとは、なんだかとても愉快ではないか。

|

« 「ハプニング」 | トップページ | タクシー王子・川鍋社長に会う »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: つられあくび:

« 「ハプニング」 | トップページ | タクシー王子・川鍋社長に会う »