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2008年10月14日 (火)

峰岸徹さんの訃報に接して

   俳優の峰岸徹さんが亡くなった。緒方拳さんに続き、個性的な俳優を我々は失ったことになる。

   1カ月以上前に、「おくりびと」という映画を試写会で観た。悲しむ遺族の前で、床に横たわる遺体をきれいに整え、死後の世界へ送り出す葬儀社の青年の話である。本木雅弘がその青年の役を演じている。

   映画の性質上、次々と遺体がスクリーンに現れる。多分、布団の上に横たわる遺体がこんなに数多く登場する映画はこれまで洋の東西を問わず、存在しなかったと思う。だいたい、「おくりびと」を主人公にした映画を作ろうと思い立ち(まあ、思い立つことはあるだろうけれど)、それを完成させた製作者たちの腕力には、脱帽するしかない。

   その次々に登場する遺体の一人が峰岸徹さんだった。ただ、せんべい布団の上に無精髭を生やして「死んでいる」役である。回想シーンで数秒間ほど生きているシーンがなくはないが、登場シーンはほぼ「死んでいる」役なのである。しかも、本木が愛憎を抱く実父の役であり、実の父親の死に装束を調えるもっくんが静かに涙を流すシーンは圧巻である。

   峰岸さんが肺ガンで亡くなったという報に接したときすぐに思い出したのはこの映画のことだった。撮影は昨年の春ごろだというから、まだ病はそれほど重篤ではなかっただろう。が、ご本人も周囲の人たちも、峰岸さんが肺ガンに冒されていることは知っていたに違いない。

   そんな、「死にとても近づいている」俳優に、「死んでいる」役を依頼しに行った人もすごいけれど、その要請をしっかと受けとめて、自身にひたひたと近づきつつある「死んでいる人」の役をみごとに演じきった峰岸という役者もすごい人だとしみじみ思う。

  役者の持つ、すさまじいまでの業というものを感ぜざるをえない。

   合掌。

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