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2009年10月 2日 (金)

銀座のユニクロでジル・サンダーの新作を検分

  
    昨日の夕方、銀座のユニクロに出かけた。あの、ジル・サンダーが手がけた秋冬物のお披露目会があったからである。もとの銀座ユニクロのビルは全館が女性用に。そのすぐ隣のビルが男性専用にと様変わりしている。

  両館を回遊して、ジルの手になるユニクロ製品「+J」をくまなく見てみたのだが、感想は「うーーむ」である。今回の商品を見て、あらためてジル・サンダーの魅力とはなんだったのかがよくわかってしまった、というのが屈折した結論なのである。

  ユニクロの特設フロアに並んだジル・サンダーの低価格の洋服を眺めながら、彼女の洋服の魅力の大半は、その形や色といったデザイン的部分もさることながら、一番は「素材」だったのだなあと思い知らされたのである。

    どこでどうやって手に入れてきたんだろうというような上質なカシミヤやウール、ため息のでるようなニット素材などがジルの真骨頂だったのである。それを身につけることでオーラのように発光し始める「上質感」は、当然のことながら、ユニクロ製品にはない。どんなに素晴らしいカッティングをしても、繊細なシルエットを描いても、凡庸な素材では話にならないのである。

    ユニクロ価格では、使用できる素材に限りがある。それどころか、ユニクロ製品内で見比べても、同価格帯を比較すれば、ジル製品には彼女へのギャラ(多分、かなりなものだと思うけど)が上乗せされている分、劣っているような気がしないでもない。
    逆に言えば、名もないデザイナーを起用したユニクロ製品の方が、かえって素材がいいのではなかろうか。

  そんなわけで、結局ジル製品はなんにも買わなかった。多分、同様の感想を持つ人は少なくないだろうから、こんなことを予想して申し訳ないけれど、「+J」はそんなに売れないのではなかろうか。そうなると、ただちにユニクロ内部でも今後どうするかについて議論が重ねられることになるだろう。

  あの完璧主義者のジル・サンダーが今回のユニクロ製品に、素材面を考えただけでも、素直にOKを出したとは思いがたい。おそらくはうんざりするほどタフな激論が交わされただろうと想像する。きっと、従来の製品作りに慣れ親しんだユニクロ・スタッフは心から面食らったに違いない。その末に生み出された製品がさして売れないとなると、今後についてはスタッフは懐疑的にならざるを得ないだろう。

  ジル・サンダーの盛名は、我々の世代(柳内さんもその中に含む)には響くけれど、ユニクロのヘビーユーザーには大して「霊験」はないのではなかろうか。むしろ、ジルの名前に惹かれて初めてユニクロの敷居を跨ぐ人が増加する、という点にこそそのメリットはあるのではないか。となると、今後の方策としては次の2つしかない。

  ひとつは、ジルの名に恥じない、もっと高品質の製品を作ること。価格は現在の3倍にする。その代わり、素材をもっと上質なものにする。さもなければ、すっぱり止める。ふたつにひとつだろうと、外野席で眺めながらそう思う。

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