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2009年10月13日 (火)

ミルフィーユじゃなくてミルフイユ!

 
    久しぶりに、京都在住の関谷江里さんことエリチンのサイト(ブログと言うと怒られる)を見ていたら、いかにもエリチンらしいことが書いてあったので、思わず笑った。ぜひ、もっと多くの人々にこの主張をお届けしたいので、ここに引用させていただきます。エリチンのサイトの冒頭に、<わたしの言葉の好みはこちらです。よろしければご覧ください。>という、みょうちきりんな案内があって、そこをクリックすると、以下のような文章が登場する。一部割愛しつつ、ご紹介します。

<(・・・・・・)この話をはっきりするのは初めてですが、やっぱり聞いてくださいませ。<(_ _)> 
自分の言語感覚はヘンという認識もあった上で語るから許して~。
実はわたしは、ブログという言葉を使わないのです。
このサイトオープン当初には、何度か使いましたが、
ある時から音として耐えられなくなってしまったのです。
「ぶ」で始まる言葉:
ぶさいく 不細工
ぶざま 不様
ぶしょう 不精
ぶきよう 不器用
ぶようじん 無用心
ぶれい 無礼
ぶこつ 無骨 ・・・
で、
ブログ。 (-_-;)
「ブログ」とは、 weblog ウエブログの略であります。
けれど、 ログに、「ぶ」がつくなんて、
理不尽なことだ、かわいそうだ~。\(゜o゜)/
(・・・・)頑張って「ブログ」という言葉に対して無感覚でいようとするのだけど、
それでも「ブログ」という言葉には濁音が2音もあって美しくない。
音として、かなり耐え難いものがあると思います。
「ブロガー」なんて、さらに耐え難い~~~(叫)>

   と、まずは、エリチンの「言葉の音」に対する繊細な美意識をご披露する次第。お次は、用語についての一家言を。

<(・・・・・)どんな言葉をわたしは決して使わないかというと、以下のようなものです。
●お昼を軽く「済ます」というような言葉。食事はありがたく「いただく」ものです。用事じゃないんだから、毎回の食事はうれしいものなんだから、「済ます」という言葉は出てきません。もちろんわたしも毎回きちんとした食事をしているわけではないけれど、それでもたとえば朝食を「済ます」ってやっぱり言わない。(「とる」ならいいと思う。)
●お弁当や鍋を「つつく」とは、わたしは言わない。「つつく」って言うと、なんだかキツツキが木をつんつんしているイメージが思い浮かんで、お弁当やお鍋が痛くてかわいそうやん、と思っちゃう。やっぱりお弁当もお鍋も大切に「いただく」ものだと思うのです。
●それから「こだわりの」って言葉も絶対に使わない。美食にまつわる表現で、これほど安っぽくなってしまった言葉もないでしょう。世の中に、自分の料理(あるいはお菓子などの商品)を提供してやっていこうというくらいの人なら、こだわっていて当然だし、いやもう理屈を超えて、とにかくあまりに安易に使われるようになっていることがやだ~。
●さらに「癒し」とか「癒される」と言う言葉をわたしはほぼ100%使わない。(「傷が癒えたら」というように、本来の意味で使うことがあるから「ほぼ」です。)ものを表現するとき「癒しの○○」とか「癒される空間」といった使い方が、褒め言葉としてものすごく使われるけれど、わたしは全然いいと思わない(-_-;)何でかわからないけれど、これも安易に使われるのがいやだということと、もうひとつ、癒しというからには「疲れ」とか「ストレス」とか、前提としてマイナス要素を含んでいるからだと思う。「癒される」ということは、現在ストレッセな状態であることを認めたことになるんじゃないかと思うのです。例えば「癒しの空間」というのは褒め言葉なんだろうけれど、「心が洗われる空間」あるいは「気持ちが和む空間」っていう方がよりポジティヴなんじゃないかしらん?>

   今度はご自身が好まない言い回しについての説明がなされている。とてもよく分かる話である。「キツツキみたい」というのがいかにもエリチンらしくて笑ってしまう。さて、お次はフランス語について。これに関しては、エリチン、厳しいよ。

<(・・・・)そしてもうひとつ、表記について、日ごろ常々述べたいと思っていたので述べます。日本語におけるフランス語の表現とカタカナ表記についてです。これはかなり多くの料理人やパティシエの皆さんとも意見を同じくしているのです。作る側、それからライターとか編集者が今後一致して変えていかねばならないことです。
●長年の慣例とはいえ、いい加減、「ミルフィーユ」という発音と表記をやめましょう。「ミルフイユ」です。ミルのフィーユっていったら、女の子が1000人いるってことなのよ(-_-;) >

「女の子が1000人」ですか。なんだか、みみず千匹みたいだけど、ちょっと違いますか。え、全然違う? 失礼しました。「女の子1000人」はミルフィーユでmille filles。お菓子のミルフイユはmille-feuilleで、「1000枚の葉」。確かに薄片が何枚も重なったようなお菓子ですもんね。milleは「千の」という意味です。

   ちなみに、長さの単位のメートルはフランス語です。メートル原器がフランスで作られて、それが世界中の長さの基になっているからなんでしょうが、われわれが日常よく使う「ミリメートル」はmillimètreで、頭についているmilliは「千分の1の」というフランス語。つまり「1メートルの千分の1の長さ」が「1ミリメートル」なわけですね。ついでに言うと、「センチメートル」はcentimètreで頭のcentiは「百分の1の」という意味ですね。1メートルの百分の1が1センチである、と。ただし、centは「百、百の」という意味。英語のcenturyは、だから100年という意味で1世紀なんですね。話が脱線しました。エリチンの話を続けます。

<(・・・・)いい加減「ブーランジェリ」という発音と表記をやめましょう。「ブーランジュリ」です。「ジョルジュ・サンク」という発音や表記は定着しているのだから(「ジョルジェ・サンク」と言ったらヘンでしょう?)「ブーランジュリ」と言えない(書けない)はずはないと思う。>

   はい、ごもっとも。パン屋さん(お店)はboulangerie(ブーランジュリ)、パン屋さん(人)はboulanger(ブーランジェ)。多分、両方がごっちゃになって「ブーランジェリ」になったのではないでしょうか。ちなみに女性下着のブラジャーはフランス語ではsoutien-gorgeで、英語でbrassiere。この英語が日本に入ってきてブラジャーとなった、と物の本(どんな本やねん!)には書いてあるが、この英語の綴りはどう見てもフランス語綴りである。そこでフランス語の辞書をよーく見てみるとありました! Brassièreで「女性の胸着」と。しかし、こんな立派なフランス語があるのになぜ、フランス人はブラジャーをスーティエン・ゴルジュなどという不思議な単語(直訳すれば「喉支え」)にしたのか、私にはその心がよく分からない。おっと、また脱線だ。

<それから、「グランメゾン」という言い方はおかしいのです。いったいいつ、誰が言い出したのでしょう。言うなら「グランドメゾン」だし(メゾンmaison=女性形)、さらにこれは、たとえば「タイユヴァン」とか「グラン・ヴェフール」とか、いわゆる「老舗」といえるお店に使う言葉です。>

  これはすべての名詞に男女の別があるというフランス語ならではの話なので、なかなか難しいです。後ろの名詞がmaisonみたいに女性名詞ならその前につける形容詞は女性形になります。だから、grande maison(グランドメゾン)となる。しかし、男性名詞の前ではgrand(グラン)となる。gran-croix(グランクロワ=レジオンドヌール一等勲章)というように。どうすれば名詞の男女の別が分かるのか? これはフランス人なら誰でも分かる。八百屋で、ジャガイモはマスキュランかフェミナンかと尋ねると、即座に返事が返ってくる。他の野菜すべてについても同様。これには感動する。フランスやイタリアで、公園のホームレスが拾ってきた新聞を読んでいるのを見ると、ああ、イタリア語(フランス語)が読めるんだとちょっと嫉妬する。

    私が気持ち悪いのは「既視感」を意味するフランス語のdéjà vu。déjà が「既に」、vuが「見た。あるいは見られた」。日本語表記でデジャ・ヴュなのだが、ときどき「デジャブー」という表記を見ることがある。これが気持ち悪い。「すでに高木ブーになっちゃった」ということなのかと思ってしまう。

      ついでに書いておくと、よく「プチ・バカンス」という和製フランス語が使われるけれど、vacanceは女性名詞。しかも「休暇」という意味で使うなら複数となってvacancesとなるので正確には「プティット・ヴァカンス」petites vacancesとなります。どうでもいいけど。

  アー、疲れた。

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コメント

重箱の隅をつつくみたいですが、「ミルフイユ」だとmille fouilles 千回の発掘作業? になってしまいそうです。カタカナ表記にした場合一番近いのは「ミルフォイユ」だと思われます。
Bibi

投稿: | 2009年10月24日 (土) 18時06分

確かに、発音記号を調べるとおっしゃる通りかもしれません。カタカナ表記は難しいですね。ご教示、ありがとうございました。

投稿: Bibiさま 路傍より | 2009年10月26日 (月) 18時21分

ご教示、なんて言われるとBibiってしまいそうですが、路傍さんがコメントを返して下さったのがとても嬉しくて、調子に乗って書き続けます。
フランスに住みフランス語を使う生活を26年続けています。耳はフランス語耳になっているのですが、はっきり言って「フイユ」では「フィーユ」と同じくらいフランス語のfeuilleからは遠い音になります。なのですでに外来語として定着しているミルフィーユという表記をわざわざミルフイユに変える妥当性がアルノダロウカ?と思うのです。Bibi

投稿: | 2009年10月28日 (水) 16時24分

ご返信、ありがとうございます。ミルフィーユをミルフイユに変更する妥当性があるのか、というご指摘ですが、妥当性はともかく可能性はゼロだと思います。だって、「ミルフイユ」は、日本語使用者には発音しにくいですからね。
フランスに住んで26年ですか。長いですね。そろそろ焼き栗の季節ですね。屋台で、新聞紙に包んでもらって、ポケットに入れて、皮を道端にぽいぽい捨てながら食べる。もう、道端に捨てたりはしなくなったのでしょうか? 今日は11月だと言うのに東京では、TシャツでOKな一日でした。あさってからは本格的に寒くなるとの予報です。

投稿: Bibiさま 路傍より | 2009年11月 1日 (日) 20時11分

11月初めには2℃まで下がっていた気温、今週は急上昇でヘンに暖かいです。オペラ座前にオープンしたユニクロ、やっと普通の店らしくなってきましたよ。先月はずっとラッシュ時の山手線の車内みたいでした。良質な製品が廉価で(それでも日本の価格と比べて2倍という話ですが)買えるからでしょう。オープン時には「カシミアの民主化」をやっているすごい会社だと仏人ジャーナリストがラジオで興奮していましたっけ。
アレルギー性喘息で苦しかった10月、今は「少食療法」ですっかり元気になりました。すごーく効果ありましたよ。路傍さんも花粉症にお試しあれ。Bibi

投稿: | 2009年11月21日 (土) 16時05分

お便りありがとうございます。当地はやっと冬らしくなってきました。が、いつもは黄色く色付く絵画館前の銀杏もまだ足踏み状態です。「カシミアの民主化」というのはいかにもフランス人らしくていいですね。日本人にとっては「超安いカシミア」なのに、革命を経験した人々にとっては「一部ブルジョアが占有してきたカシミアを下々の民草も着用できるようになった」という感覚なんでしょうか。まあ、冗談ですが。
ところで、小食療法って何ですか?
それで、本当に花粉症が軽快するんでしょうか?
ついでに少しはウエストも減るんでしょうか?
そうだと嬉しいんですが・・・。

投稿: bibiさま 路傍より | 2009年11月23日 (月) 20時54分

少食療法、1日2食療法とも名付けられているようですが、じつはこれ路傍さんのサイトからのリンクで見つけたんです。「ユニクロとアレルギーと文庫本」だったと思いますが。内容は(私の理解に間違いがなければ)朝食を抜いて前夜夕食から昼食まで15時間以上食事を摂らない時間をキープする、昼食・夜食も腹6分目~8分目に量を減らす、玄米・豆腐・野菜を中心に動物性食品を極力少なめにする、水を1日1リットル半~2リットル飲む、といった事です。3日で効果が出ました。体も軽く・柔らかくなり、集中力は上がり、疲れにくくなってびっくりしています。関連サイトをご覧ください。BIBI

投稿: | 2009年11月26日 (木) 04時42分

なるほど、そんなに疲れにくくなりますか。試してみます。最近は炭水化物の摂取を極力抑え、食事の前半で野菜などできるだけゆっくり消化されるものを食べるようにしていたのですが。小食療法、やってみます。ありがとうございました。

投稿: bibiさま 路傍より | 2009年11月26日 (木) 21時09分

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