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2009年10月 5日 (月)

哀しみのソレアード

  実にめまぐるしい土曜日だった。朝、4時半に起床。朝風呂に入った後に、迎えに来てくれたゲンちゃんのスマートに乗って、一路、中央区新川にあるショップ・チャンネルのスタジオへ。午前6時55分に集合、打合せを済ませた後、8時からON AIR。ゲンちゃんと組んで作ったトラベル・バッグをテレビ通販で売りまくったのである。

    バッグ製作会社の社長がメイン・ゲストで、私がおまけのゲストで出演。けたたましい勢いで、いかにこのバッグが素晴らしいかを力説し、今すぐ買うべきであると勧奨するMCの女性に合いの手を入れたり、質問に即応したりしながら1時間。なんとバッグは完売! 

    現場の緊張感はただごとではない。ON AIR中、時々刻々と、あと何個残っているかや、何色の売り上げが弱いかや、視聴者がバッグの中の収納を見たがっているなどという情報がカメラの前に立つわれわれに届けられる。それに即応しなくちゃならないから、緊張もいやがうえにも高まるわけである。

    放送終了後、ゲンちゃんと朝飯を食いに築地に出かけてみたものの、観光客と思しき人々で溢れかえっているので、諦めて「コンラッド東京」のゴードン・ラムゼイでコンチネンタル・ブレックファーストを食べる。食後、いつものようにぐずぐずとよしなしことを喋り続ける。「とにかく、ふたりとも、65歳までは健康でいて、一生懸命働こう」と誓い合う。でもまだ午前11時である。

    ゲンちゃんに会社まで送ってもらい、職場のソファに横になる。眠ろうと思ったがなぜか眠れないので、机の上にあった本を読む。きたみりゅうじ氏という人が書いた「SEのホンネ話」で、帯には「最先端技術を駆使した肉体労働者(=SE)の過激で笑える胸の内」とある。システム・エンジニア(SE)という人種と話をしたこともないので、その生態の一端が分かって興味深い。

    気がつくと夕方になっていたので、半蔵門から地下鉄に乗って三軒茶屋へ。本日のメイン・イベントである。世田谷パブリックシアターで行われる、浜田真理子さんのコンサート「マイ・ラスト・ソング vol.2」を聴く。タイトルから分かるとおり、久世光彦氏のエッセイ集「マイ・ラスト・ソング」の中から何曲かを選び出して、浜田さんが歌うという趣向のもの。昨年もこの会場で行われたが、仙台に出張していたので聴くことができなかった(その辺の話は2008年12月9日付けですでに書いた。http://kingkingko.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/index.html

  今回で浜田さんのコンサートを聴くのは3回目だが、過去2回はみっともない話だが、泣いてしまっている。浜田さんの歌声に接するとなぜか涙腺が緩むのだ。しかし、今回は会社の同僚が複数いる。隣には女性の同僚。すこし先には、あろうことか弊社社長までいるから、うかつに泣くわけにはいかないのである。なんとか涙腺をきゅっと締めて最後の曲まで辿り着く。あとはアンコールが残るのみ。「あー、まさか<哀しみのソレアード>なんか歌ったりしないだろうなあ・・・・」と身構えていたら、案の定、その通りだった。この曲には弱いのだ。

  久世氏の本にこの曲が載っているわけではない。「久世さんにこの曲を捧げる」という趣旨で浜田さんは歌うのである。原曲は、作詞:F.Specchia/M..Seimandi/A.Salemo 作曲:Zacar/D.Baldanでタイトルが「SOLEADO」。

    スペイン語で「日当たりの良い場所、陽だまり」のことだそうである。最初はイタリアのグループがインストで演奏。それがアメリカに渡って、クリスマスソングになったらしい。「哀しみ」など、最初はどこにもなかったのに、どこかの誰かが「哀しみのソレアード」と名づけた。「哀しみの陽だまり」。いいタイトルである。浜田さんが静かに、哀切に歌い始めると、会場のあちらこちらで嗚咽が聞こえ始める。

もうすぐ終わるのね
ふたりの砂時計
さよならの足音が
背中に聞こえるわ

あなたの温もりを下さい
もう一度 この心 この肌で
覚えておきたいの

ひとりで生きてゆく
明日はつらいけど
倒れずに行けるでしょう
想い出があるかぎり

淋しい人生に
光をくれた人
今はただ言いましょう
この愛をありがとう

今はただ言いましょう
この愛をありがとう

  ベソをかきそうになるのをかろうじて堪えて、もちろん、社長に挨拶もせずに、会場を後にする。三軒茶屋から地下鉄に乗り、渋谷で山の手線に乗り換え、新宿で総武線に乗り換えて、静かに電車の振動に身を預ける。窓の外は暗い。窓に映った自分の姿を見つめる。蛍光灯の明かりで青白く見える。

  三鷹で下りて、なじみのカフェ「ハイ・ファミリア」に行き、スパゲッティ・ミートソースを食べ、ベルギーの生ビール「ヒューガルデン ホワイト」を2杯一気に飲む。夜道をふらふらしながら家に帰る。公園の前で千鳥足になっている自分が分かる。随分安上がりな体質だな、と思う。

  家に帰って、シャワーを浴びる。新型インフルエンザのウイルスはしっかり洗い流しておかなくちゃな。文庫本をもってベッドにもぐりこむが、読み出すパワーがすでにない。電池は切れかかっている。頭の中では「哀しみのソレアード」のメロディがずっと続いている。

  ゲンちゃんももう眠っているだろうか、と思いつつ眠りに落ちる。

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