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2020年9月

2020年9月14日 (月)

藤井聡著『MMTによる令和「新」経済論』を読む 

 MMT(モダンマネタリーセオリー 現代貨幣理論)なるものをご存じだろうか? すでに二十世紀後半には体系化された正統的経済理論のひとつだが、その特異な理論で最近、注目を集めている。安倍政権で内閣官房参与を務めたこともある著者はこの理論に依拠しつつ、日本経済の復興案を提言している。 

確かに、この理論、目からウロコが落ちるというか、キツネにつままれたようなというか、驚くべき見解が目白押しなのである。

紙数の都合上、ほんの数例しか紹介できないが、例えば、「お金というものは人が人から借りることで生まれる」のだと言う。あなたが銀行に行って百万円借りるとする。あなたに信用があれば、たとえその銀行が無一文であったとしても、あなたの口座に百万円と書き込むことで貸し付けてくれる。あなたに貸し付けるという行為を通じて百万円という銀行預金を何もないところから生み出すのである。こうして生み出されるお金のことを「万年筆マネー」と呼び、実は、これは銀行が日常的に行っていることなのだと言う。

 そして、この理論の最も注目すべきところは、「政府は、自国通貨建ての国債で破綻することは、事実上あり得ない」と主張する点にある。

なぜならば、貨幣とは中央政府と中央銀行とで構成される「国家」が作り出すものであり、足りなくなれば作り出せばいいだけであって、手をこまねいて破綻してしまう国家などあるわけがないからである。言われてみれば、至極もっともな理屈ではある。さらに著者は、日本の財務省ですら、公式文書で「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と明確に述べていることまで教えてくれる。

 となると、これまでの日本の緊縮財政はいったい何だったのかと、首を傾げたくなるではないか。

 財務省は日本の借金(赤字国債)は1000兆円を超え、このままでは日本が破綻してしまうと危機感を煽った。これは国民一人当たり七百数十万円借金があるようなものだとまで言って脅してくれた。当の財務省は、デフォルトはあり得ないと言っているにもかかわらず、政府支出をしゃかりきになって抑制し、消費税の増税を繰り返してきた。そんなことでデフレから脱却できるわけがないではないかと、著者は悲憤慷慨するのである。「その結果として日本経済は疲弊し続け、賃金は下落し、国民の貧困化が加速した」と。確かに、2015年までの二十年間で日本のGDPはドル建て換算で20%縮小。断トツの世界最下位で、日本が唯一のマイナス成長国家なのである。成長率の世界平均はプラス139%。ちなみに中国はプラス1414%である。このままでは、日本は東アジアの一貧国に成り下がってしまうと著者は慨嘆する。

 その打開策はただひとつ。適度なインフレになるまで財政赤字を拡大すること。緊縮財政などやっている場合ではない。世の中に出回っているお金の総量が少ないのでデフレに陥っているのだから財政出動でもっと貨幣循環量を増やすことが必要なのだと、著者はきっぱり主張する。

 そして、この主張の直後に世界を襲ったのが、新型コロナウイルスだった。これで事態は一変。世界各国の中央銀行は輪転機をフル稼働させて紙幣を刷りまくっている。日本も同様。緊縮財政はぶっ飛び、2020年度の第二次補正予算は32兆円に。これ、全部赤字国債と建設国債で、目下、市中に前代未聞の量の札束が投下されている真っ最中なのである。さて一体日本経済はどうなるのか。本書を読みつつ見守っていただきたい。

 

 

 

 

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